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『君の名は。』のプロデューサー川村元気氏が語る企画術

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はじめに

こんにちわ、胆石クラッシャー(@ev20405)です。

少し前に、『君の名は。』のプロデューサーである川村元気さんが登壇するイベントに参加しまして、そこで川村さんの企画に関するお話を聞くことができました。

今回はそのお話をベースに、ヒットメーカーである川村さん独自の企画術について書いていこうと思います。

 

そもそも川村元気さんって?

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簡潔に言うと、日本で一番有名な映画プロデューサーです。

大学卒業後、東宝に入社し、26歳で初めて映画『電車男』を企画・プロデュースし、37億円の興行収入を記録します。

その後、『デトロイト・メタル・シティ』『告白』『悪人』『モテキ』『君の名は。』『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』といったヒット作をプロデュースしつつ、小説や絵本、ミュージックビデオの監督、映画脚本執筆まで行う、あらゆる分野で活躍しているスーパークリエイターです。

ちなみに、川村さんの考え方については以下の本が参考になります↓ 

仕事。

仕事。

 
理系に学ぶ。

理系に学ぶ。

 
超企画会議

超企画会議

 

 では、そんな川村さんの企画術とは、一体どんなものなのでしょうか?

 

川村元気さん流企画術 〜面白さの発見、組み合わせの発明〜

企画とは

企画の仕事は料理に似ている川村元気氏は語ります。

良い素材(物語・テーマ)を適切な方法(監督、脚本、キャスト、演出)で調理し、盛りつける(広報、原作)。

まずクリエイターを見つけることから初め、それをどう組み合わせるかを考える。

 

映画企画の原則

①普遍性×時代性
:人間の感情に訴える物語×今である必然性

②発見×発明
:テーマや物語を発見し、映画的組み合わせを発明する

 上記を踏まえて、実際の作品ではどのように考えていったのでしょうか?

 

電車男』の場合

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電車男 スタンダード・エディション [DVD]

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古典的な物語×時代性のある原作

インターネットの物語を映画にするだけだとニッチになる。そこで、冴えない男が高嶺の華にアプローチという古典的な組み合わせと「ネットの人たちからのアドバイス」という現代的な要素を混ぜて、普遍性×時代性を構築した。

 

「東京の街をどう撮るか?」というテーマ×過去の名作

ヴィム・ヴェンダースの『東京画』やソフィア・コッポラの『ロスト・イン・トランスレーション』など、東京の街をうまいこと撮った映画が過去に数多くあったが秋葉原はまだ誰も撮ってなかった。そこで、秋葉原という街の芸術性を組み合わせられないか?と考えた。

電車男』の企画については、こちらの記事に詳細が書かれています。

www.cinra.net

例えば、僕が26歳のときにプロデュースした『電車男』の場合、最初にあったのは、「東京の街をどう撮るか?」というテーマだけだったんですよね。

―あ、そこから始まったんですね。

川村:はい。すると、ヴィム・ヴェンダースの『東京画』やソフィア・コッポラの『ロスト・イン・トランスレーション』など、東京の街をうまいこと撮った映画が、過去にいっぱいあるわけです。それらの映画は、どんなレンズや機材を使って撮ったのかというところまで調べて、ひと口に東京といっても、まだ誰も秋葉原をちゃんと映画として撮ってないことに気づきました。あの街はビジュアルが面白いから美術的にも使いたいし、そこに「2ちゃんねる」という空間が混ざってくるとさらに新しいなと。

―そういう発想の流れだったのですね。

川村:あと僕は、ビリー・ワイルダーの映画『アパートの鍵貸します』や『お熱いのがお好き』、チャップリンの『街の灯』みたいに、ダメな男が高嶺の花に向けて頑張る話が好きなんですよね。だから、そういうロマンティックコメディーの古典に、「ネットの人たちからのアドバイス」という現代的な要素を混ぜて、舞台は秋葉原。そういう三点倒立で、映画の企画ができないかな? というところから考えていきました。

 

君の名は。』の場合

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君の名は。』には3つの発明がある。

新海誠監督にメジャー長編をやらせるという発明

アニメ業界ではすでに有名だった新海誠監督だが、これまでは短編かつマニアックな作品が多く、誰も監督にメジャー長編を撮らせようとしていなかった。そこで、『君の名は。』ではメジャー映画のストーリーと物語性、スタッフィングに挑戦した。

 

②新旧混在のスタッフ・キャスト

新旧混在のスタッフとキャストで安定感と新鮮さを担保した。

1つ目は、『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』で作画監督を務めた元ジブリ安藤雅司(2017年時点での歴代邦画興行収入ランキング上位4作品のうち3作品の作画監督を担当しているレジェンド)と、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』や『心が叫びたがっているんだ』のキャラデザを務めた田中将賀との組み合わせ。

2つ目は、『千と千尋の神隠し 』『ハウルの動く城 』で声優を務めたベテラン神木隆之介氏と、オーディションを勝ち抜いた新星・上白石萌音との組み合わせ。

 

③RADWINPS×映画音楽

ロックバンドの才能を映画音楽に取り込んだ。ロックバンドに映画音楽をお願いするのは危険だと言われていたが、Youtube世代に刺さると考えて依頼し、複数曲を入れたことでミュージカルのような仕上がりになった。

 

最後に

いずれも結果論で後付けでしかない。つくるという行為は強烈な自己肯定だから、徹底的に疑って昇華させていくことが重要。

 

質疑応答

・どうやってターゲット決めているか?

自分が観たいもの、欲しいものを考え抜くだけ。お金払って映画を観るし、本屋で本も買う。そうすると、「あーこういう映画あればいいのに」「こういう本あればいいのに」と思ったときに、じゃあこういうのがあればヒットするのでは?と思うことが出来る。そうして裏付けしていく。自分が感じるなら、他にも求めている人がいるのでは。近いところを掘っていくほうが深くなる。

 

・どのようにアイディアの種を見つけているのか?

みんなが感じてるけど、まだ言葉になってないことを拾うことを意識してる。「なんでこうなってるんだろう」と感じたものを疑っていく。「実は私もそう思ってた!」を見つけることがヒットだと思っている。その種は、違和感ボックスみたいな感じでストックしている。

この内容については、以下の記事に詳しく書かれています。

diamond.jp

世の中では「A」といわれていることが、本当にそうなのかと仮説を立て、これを綿密に調べる。そこで実は「B」でしたと分かれば、それを物語化して提案するのです。それに対して読者が潜在的に抱いていた感情が反応すれば、新しいエンターテインメント、面白い物語が生まれると思っています。

 世間では「夫婦は結婚したら、愛が情に変わって家族になる」と当たり前に言うが、本当にそれでいいと皆が思っているのだろうか。恋愛感情というものが自分の周りから失われていることにも皆、うすうす気付いているのに、それを見て見ぬふりをしていないのかと。

 こうした、人々の集合的無意識に問いを投げかけて、「それは僕も気になっていた」とか「私もずっと引っ掛かっていた」と、読者が次々と言いだすことになれば、それがヒットするということなのかなと思います。

diamond.jp

「男の色が青、女の色がピンク」というルールを知らなかった。でも、これは誰が決めたのか。なぜ、そういうルールになっているのかと幼心に思いました。これが、「違和感ボックス」に入った一つ目の出来事だったかもしれません。 

まとめ

名著『アイデアのつくり方』で、作者であるヤング氏は「アイデアは既存の要素の新しい組み合わせである」と語っています。

アイデアのつくり方

アイデアのつくり方

 

 今回の川村さんのお話も、根幹は要素同士の組み合わせにあると感じました。

川村さんは、素材(物語・テーマ)を嗅ぎとる圧倒的な嗅覚と適切な方法(監督、脚本、キャスト、演出)を見つける知識・センスを持ち、かつ独自の組み合わせを見出せる人なのでしょう。

面白い作品を作るためには、過去の名作をたくさん見ろ!とよく言われますが、その理由は適切な方法を見つけるための引き出しを増やすべき、という意味な気がしました。

 

川村さんの他の著作はこちら↓

四月になれば彼女は

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億男

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世界から猫が消えたなら (小学館文庫)

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ムーム (MOEのえほん)

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