映画ビジネス研究所

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【考察】「女性にウケる映画はヒットする」というのは本当か?

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はじめに

映画業界では「女性にウケる映画はヒットする」と言われています。確かに女性の方が拡散力はありそうな気もしますが・・・果たしてそれは本当なのでしょうか?それに関して、NTTコムリサーチが興味深い調査をしていたので、データを踏まえながら見ていこうと思います。

【NTTコムリサーチの調査結果はこちら】

research.nttcoms.com

「女性にウケる映画はヒットする」2つの理由

①複数人で映画鑑賞に行く場合が多い

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※引用:NTTコムリサーチ

上のグラフは、直近1年以内で誰と観に行くことが多かったかを男女別に集計したものです。

誰かと一緒に観に行くという複数名鑑賞の割合が、男性の64.5%に対して、女性は74.6%で、10ポイント女性の方が高い結果でした。つまり、女性層を動員することで、複数名で鑑賞する割合が高くなる可能性が高く、本来であれば映画を見に行く気があまりなかった層も取り込んでいる、と考えられます。

また、同伴者の内訳比率をみると、女性は「家族」「パートナー」「友人」「1人」と均等に近いバランスであり、様々なパターンで複数名鑑賞をするため、女性層を動員できれば、年齢や性別の異なる他の層にもバランス良くアプローチできる可能性が高い点も見逃せないポイントかと思います。

 

実は、この現象はポケモン映画にも通ずる部分があります。

幼い頃、両親に頼んでポケモンの映画を見に行ったことがある方は多いのではないでしょうか?まさにそれと同じ状況が起きているのです。子供が行きたいとせがめば、両親や兄弟も一緒に行くことが多くなるはず。事実、ポケモン映画は邦画のヒットのラインである興行収入10億を全作品で大幅に超えており、全18作の中で、5作目(興行収入26.7億円)と17作目(興行収入29.1億円)と18作目(興行収入29.1億円)以外は全て興行収入30億円以上の大ヒットを叩き出しています。

もちろん、前売券特典で限定ポケモンを配布したり、直前にテレビで前作を放送したりと、様々な工夫があってのことですが、子供が両親や兄弟を巻き込んだ結果が大きく影響していると考えても問題ないでしょう。

 

②男性よりも鑑賞後の口コミ発信率が高い

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※引用:NTTコムリサーチ

上のグラフは、直近で見た映画を鑑賞後に誰かに話したか(いわゆる口コミ)を男女別に集計したものです。

特に顕著なのは、「直接口頭で話した」が男性41.1%に対して、女性63.9%で、20ポイント以上も女性が高い点です。顔見知りや友人からの口コミ情報はネットの情報に比べて信頼性が高いですし、何よりコミュニティー内で話題の一つとして取り上げられます。学校や職場など自分が属するコミュニティで話題になっている事柄に遅れたくないという考えは誰もが持っていますし。話題になれば、みんなに遅れをとるまいと観に行く人がでてくるし、デートで観に行くカップルなんかもでてくるはずです。

劇場公開から早くて3〜4ヶ月後にはDVDレンタルがスタートしている昨今、映画館で映画を見てもらうためには観客に「今観たい!」と思わせる必要があり、そこに女性層が口コミを発信するインフルエンサーとして観客動員にコミットしていると考えられます。

 

少女マンガの実写映画化が多い理由

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※現在公開中の人気少女マンガ原作の映画「青空エール」。作者は河原和音

ここまで、女性層を獲得することはヒットに繋がる、という点について言及してきましたが、それは最近盛んな「人気少女マンガの実写映画化」にも影響しています。

人気少女マンガであれば、すでに原作に熱烈な女性ファンがついており、話題にしたり、劇場に来たりしてくれる可能性が高いため、「人気少女マンガの実写映画化」は手堅いヒットコンテンツとして昨今量産されています。

また、少女マンガのジャンルのほとんどが恋愛・青春・日常系なのも大きな要因です。理由は、少年マンガの実写映画化に比べて低コストで製作できるからです。

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※製作費15億円と言われている「テラフォーマーズ」

「テラフォーマーズ」や「るろうに剣心」等、少年マンガは知名度はありますが、SFやアクションが必要になるので、製作費がどうしても嵩んでしまいます。邦画の予算は数億、大作で10〜20億あたりが相場になります。その予算で少年マンガの設定を忠実に再現しようとすると、無理が生じてしまい、逆にチープなものになりかねません。

しかし、「人気少女マンガの実写映画化」の場合、少女マンガは学園モノが多く、メインとなる舞台が学校であるため、CGや美術道具もあまり必要ありません。

また、少年マンガはビジュアル的に三次元で表現することが難しいものもたくさんあるのに対し、少女マンガでは、出演者もイケメン・美人を揃えれば、原作の持つビジュアルイメージを大幅に壊すことはありません。

また、少女マンガに登場するキャラクターは中高生等の10代が多く、若手の起用が中心になるので、キャスト面でも比較的コストを抑えることができるため、製作費は数億程度に収まるでしょう。

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※「ストロボ・エッジ」と同じ咲坂伊緒原作の人気マンガを実写映画化した「アオハライド」。興行収入は19億円。ちなみに「ストロボ・エッジ」は興行収入が23億円。

数億円の製作費で、20億程度の興行収入を叩き出し、さらにDVD等の2次利用も期待できる「人気少女マンガの実写映画化」は非常にコスパのいい儲かるコンテンツです。

おそらく今後も「人気少女マンガの実写映画化」はどんどん増えていくでしょう。

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creppy.hatenablog.com

 

おまけ:男女別、直近1年以内に映画館で鑑賞した映画ジャンル

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※引用:NTTコムリサーチ

上のグラフは、直近1年以内に映画館で鑑賞した映画ジャンルを男女別で集計したものです。このデータから、順位の違いこそありますが、劇場で映画を鑑賞する場合の人気ジャンルは「アクション」「SF・ファンタジー」「ヒューマンドラマ」であることが分かります。

ただ、「アクション」の鑑賞率においては、男性が41.7%に対して、女性が24.4%と、15ポイント以上離れていました。近年、アクション大作が大ヒットを飛ばすことが少なくなってきていますが、その原因の一つとして、アクション映画自体の女性人気が高くないことが考えられます。

まとめ

・女性層を取り込む作品が大ヒットを生む

・女性は周りの人間を巻き込んで鑑賞する率や口コミ発信率が高い

・上記プラス低コストで話題になる「人気少女マンガの実写映画化」は最近のトレンドになりつつある