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映画ビジネス研究所

映画についてビジネスの観点から考察するブログ

【考察】映画「マイ・インターン」が日米で全く異なる宣伝手法をとる理由

映画ビジネス オススメ作品紹介
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はじめに

映画「マイ・インターン」を鑑賞しました。作品自体は素晴らしかったのですが、この作品は映画の内容だけでなく、日米の宣伝手法の違いについても話題になっているようでした。調べてみたところ映画宣伝に関する面白いことが浮かび上がってきたので、考察していこうと思います。

「The Intern」と「My Intern」の違い

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※日本版予告編

軽くあらすじを紹介しておくと、ファッション業界で成功し、結婚してプライベートも充実、現代女性の理想の人生を送るジュールズ(アン・ハサウェイ)の部下にシニア・インターンのベン(デニーロ)が雇われます。最初は何かとイラつくジュールズでしたが、いつしか彼の的確な助言に頼るように。そんな時、ジュールズは思わぬ危機を迎え…というお話です。

日本ではタイトルは「マイ・インターン」ですが、実は原題は「The Intern」なのです。何が違うのか。これは「マイ・インターン」=「アン・ハサウェイのインターン」、「The Intern」=「あるインターン」という意味の違いがあります。

これが何を意味するかというと、日本版ではあくまで主人公はアン・ハサウェイとしていますが、英語版では主人公をロバート・デ・ニーロとして宣伝をしている、ということです。日米オフィシャルサイトのトップ画像も、それに合わせて制作されています。

◼︎日本版公式サイトのTOP画像

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※日本版公式サイトより引用。主語が「彼女」であること、アン・ハサウェイのヒット作「プラダを着た悪魔」を引用しているため、アン・ハサウェイが主人公であるように見える

◼︎アメリカ版公式サイトのTOP画像

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※英語版公式サイトより引用。ロバート・デ・ニーロが中心の画像をトップページに使用しているため、デニーロが主人公であるように見える

 日米での映画のあらすじの違い 

もっと顕著なのが日米オフィシャルサイトのあらすじの違いです。並べてその違いを比較してみましょう。

◼︎日本版のあらすじ

華やかなファッション業界で成功し、結婚してプライベートも充実、現代女性の理想の人生を送るジュールズ。そんな彼女の部下にシニア・インターンのベンが雇われる。最初は40歳も年上のベンに何かとイラつくジュールズだが、いつしか彼の的確な助言に頼るように。彼の“豊かな人生経験”が彼女のどんな難問にもアドバイスを用意し、彼の“シンプルな生き方”はジュールズを変えていくー。そんな時、ジュールズは思わぬ危機を迎え、大きな選択を迫られることに! 

◼︎アメリカ版のあらすじ

(日本語訳)「The Intern」では、妻に先立たれた70歳のベン(デニーロ)は、退職後の生活が夢見ていたものとは違っていると感じていた。社会復帰を目指すため、ジュールズ(ハサウェイ)の経営するファッションサイトのシニア・インターンに応募することを決意する。

 

同じストーリーなのに全く違いますよね。日本では映画の中心はアン・ハサウェイ、アメリカでは映画の中心はロバート・デ・ニーロという風に扱っていることが分かりました。

日米でのキャッチコピーの違い 

◼︎日本版ポスター

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※キャッチコピーは「すべての女性に贈る、幸せになる人生のアドバイス。」「アドバイスひとつで人生は輝く」の2つ。

◼︎アメリカ版ポスター

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※キャッチコピーは「Experience never gets old(経験は決して歳をとらない)」

ご覧のように、映画の宣伝で非常に重要なファクターであるキャッチコピーにも違いがみられます。

日本語版では「すべての女性に贈る、幸せになる人生のアドバイス。」「アドバイスひとつで人生は輝く」となっていますが、アメリカ版は「Experience never gets old(経験は決して歳をとらない)」となっています。

このキャッチコピーからも、日本では映画の中心はアン・ハサウェイ、アメリカでは映画の中心はロバート・デ・ニーロであることが分かります。

加えていうなら、文章の内容から日本版のメインターゲットは働く女性、アメリカ版のメインターゲットはシニア層ということが推測できます。

日米の宣伝方針の違いをまとめる

ここで、一度日米の宣伝の方向性について整理しましょう。

◼︎日本版の宣伝の方向性

「アン・ハサウェイのタフなガールズストーリー」

①女性に大ヒットした「プラダを着た悪魔」のアン・ハサウェイ主演
②「プラダを着た悪魔」のその後のようなストーリーとアピール(続編ではない)
③ロバート・デ・ニーロ扮する70歳の新人インターンが入ることになり…というコメディ要素を足して、気軽に映画を楽しめる空気にしている
④若い女性が元気付けられそうなガールズムービー

◼︎アメリカ版の宣伝の方向性

「イケてるシニアのデニーロがファッション業界で大活躍」

①名優ロバート・デ・ニーロがイケてるシニアになって活躍する映画
②業界未経験のおじいさんがベンチャーにシニアインターンで入社?!というコメディっぽさもある
③こんなシニアになりたい、というロールモデルを見せてくれそうな空気がある
④幅広い年齢層、特にシニア層に対して、まだ頑張れるぞ!というメッセージ

 

まとめてみると、かなり方向性が違いますね…

では、そもそもなぜ同じ映画でこうも宣伝の方法がちがうのか、考察していきます。

日本とアメリカで宣伝方針が異なる原因は?

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※「荒野の用心棒」が大ヒットしたため、雰囲気だけ似ていて全く関係のない作品が「続・荒野の用心棒」というタイトルでリリースされたこともあった

国によって文化や環境、映画に対する考え方等、様々な違いがあります。そのため映画では、ある国では大絶賛されていても、ある国では酷評される、というのも少なくありません。そのため、国によって、宣伝手法を変えるということは決して珍しいことではありません。

やたらちょっと前の大ヒット作に似たタイトルの映画が店頭に並んでいたり、予告編でアクションシーンだけだったけど、実際はドラマ中心の映画だった等みなさんも経験があると思います。

そこで、今回の「マイ・インターン」において、日本とアメリカにおけるどういう違いが、今回のような宣伝の違いになったのでしょうか・・?まず日本とアメリカの映画事情を整理してみましょう。

◼︎日本の映画事情

①「プラダを着た悪魔」は若い女性に大ヒット(興行収入17億)。知名度は高い。
②アン・ハサウェイの出世作「プリティ・プリンセス」はあまりヒットしていない
③デニーロの作品でここ最近大ヒットした作品はない
④日本では「女性にウケる作品はヒットする」という法則がある

◼︎アメリカの映画事情

①知名度はやはりデニーロが上だが、アン・ハサウェイも知名度は高い。
②「プラダを着た悪魔」は「スーパーマン リターンズ」の約半分のスクリーン数でありながら、週末の興行収入第2位を記録、とのことでそこそこヒットしている
③しかしメリル・ストリープの演技が素晴らしく、アカデミー賞候補にもなり注目されたため、アン・ハサウェイ自体の評価はあまり上がらなかった
④「マイ・インターン」でのデニーロの演技と存在感は素晴らしかった

 

この材料で宣伝のコンセプトを決めるのであれば、今回のように、日本でなら「アン・ハサウェイの元気になれるガールズムービー」として、アメリカでなら「デニーロの渋さとコメディを楽しめる人間ドラマ」として、売り出すのが良さそうです。

日本でデニーロ推しで公開しても、女性層は取り込めないし、アメリカでアン・ハサウェイ推しで公開しても、デニーロの演技が素晴らしいからもっと見たいのに、なんで助演なんだ!ということになりかねません。

 

まとめ

マイ・インターンの宣伝手法の違いを紐解いていくと、各国の映画事情が見えてくることがわかりました。そして、その「見せ方」ひとつで映画の興業成績は大きく変わる、ということを実感しました。

今後も今回のように宣伝方法が大きく異なる作品を分析してみようと思います。