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映画ビジネス研究所

映画についてビジネスの観点から考察するブログ

【考察】Netflixオリジナル「火花」は、テレビドラマとは異なる極めて映画的な作品だった

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はじめに

こんにちは、胆石クラッシャー(@ev20405)です。

ピース又吉直樹原作、「火花」のドラマを全て見終えました。一言でいうと「極めて映画的なドラマコンテンツ」という感じ。もちろん面白かったです。

日本のテレビドラマとはまったく違う、いうならば「上映時間に制限がない映画」を観たような感覚でした。本家アメリカのNetflixの「ハウス・オブ・カード」が同じように評価されていた記憶があります。では具体的に日本のテレビドラマと何が異なるのか記述していこうと思います。

 

そもそもNetflixオリジナルドラマ「火花」とは?

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ますは「火花」をご存知ない方に向けて軽く説明をします。

オリジナルドラマ「火花」とは、芥川賞受賞作したピース・又吉直樹の小説「火花」を原作としたNetflixのオリジナルドラマです。

予告編はこちら↓

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日本純文学の最高峰である芥川賞を受賞した小説「火花」は、累計251万部超えの空前の大ヒットを記録し、その映像化ということで非常に注目された作品です。

 

【あらすじ】
売れない芸人・徳永(林遣都)は、熱海の花火大会で、先輩芸人・神谷(波岡一喜)と電撃的な出会いを果たす。徳永は神谷の弟子になることを志願すると、「俺の伝記を書く」という条件で受け入れられた。奇想の天才でありながら、人間味に溢れる神谷に徳永は惹かれていき、神谷もまた徳永に心を開き、神谷は徳永に笑いの哲学を伝授しようとする。

 

主演には、林遣都と波岡一喜。共演には門脇麦、染谷将太と実力派俳優が勢ぞろい。林遣都と波岡一喜それぞれの相方を務めるのは、現役の芸人「井下好井」の好井まさおと、同じく「とろサーモン」の村田秀亮。さらには板尾創路が脚本協力で参加しています。

 

ただ、これだけだと日本のテレビドラマと何が違うのか分かりにくいと思うので、何が日本のテレビドラマと違うのか詳細を説明していきます。 

Netflixを中心とした製作体制

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※Netflixとフジテレビが共同で制作するオリジナルコンテンツ第1弾として制作された「アンダーウェア」

今までNetflix「アンダーウェア」や「TERRACE HOUSE BOYS & GIRLS IN THE CITY」のようなテレビ局との共同製作作品を中心としてきました。しかし、内容としてはほとんど日本のテレビドラマの延長線上のようなコンテンツでした。

これまでのNetflixの日本オリジナル作品と「火花」が決定的に異なるのは、はじめからNetflixが中心となって製作に関わり、4K画質で190か国世界同時一斉全話配信したコンテンツである、ということです。

また、「ヴァイブレータ」「ストロボ・エッジ」の廣木隆一監督を総監督に、白石和彌監督(「凶悪」/13年)、沖田修一監督(「横道世之介」/12年)、久万真路監督(「白鳥麗子でございます!THE MOVIE」/16年)、毛利安孝監督(「羊をかぞえる。」/15年)が、10話を分け合い演出しており、Netflixならではの一本の映画として見られるような全10話のドラマとして製作されています。

つまり、Netflixが中心となって劇場映画のスタッフを総結集させて製作した「映画でもテレビドラマでもない新しいコンテンツ」、それが「火花」だったのです。

 

映画的手法の積極的活用

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※総監督の廣木隆一監督(左)と主演の林遣都(右)

「火花」で目立ったのが「映画的手法」による演出や撮影です。前述のように「火花」では基本的に映画監督を起用しています。

テレビでは「ながら見」を前提にしているのに対して、 Netflixでは「イッキ見」が大前提です。そのため没入するコンテンツという意味で非常に映画に近いため、カメラワークや画角、照明の当て方まで、テレビドラマとは大きく異なり、映画の制作手法が積極的に取り入れられていました。

また、テレビドラマではあまり使用されない、映画特有の演出が使われていました。特に気になったのは以下の3つです。

①ひき画

いわゆるロングショットとかとも言われるもので、それを見ただけでそのシーンがどこで繰り広げられているか分かるようなショットのことです。

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※例えばこういう感じ

テレビドラマはあくまでテレビ画面で見ることを前提に作られています。そのため、チャンネルを変えているときや、料理をしながら見たとき等でも簡単に状況が分かるように、役者は「バストショット(上半身のアップ)」で撮るのが基本になってきます。

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※例えばこういう感じ

これに対して、テレビより大画面で横長の映画は引き画、すなわち「ロングショット」が多くなる傾向があります。

これは、テレビに対して映画は没入するコンテンツであるため、テレビドラマのように分かりやすいショットを撮る必要があまりないこと、ロングショットで撮ると役者の全身から背景まで映るため、その分情報量や表現を大きくできることに起因します。もちろん、「画面構成」や「演技」により高度な技が要求されますが…

また、テレビドラマの場合は「ながら見」を前提に制作されているため、途中から見ても説明するようなセリフやカットが挿入されますが、映画の場合はほとんど入りません。「花火」の場合も、説明するようなセリフやカットはほぼありませんでした。

②長回し

カットせずに長い間カメラを回し続ける映画の技法です。 カットせずにカメラを回し続けることにより、役者の緊張感や映像の臨場感を維持し続けることができ、見るものを対象に没入させるという効果があります。カットが変わらず長く続くと、カメラの眼と観客の眼が同化します。そうするとカメラで写したものを見せられているという意識がなくなり、画面が与える感情を素直に受け止めることができるのです。

映画「トゥモロー・ワールド」ではすさまじい迫力のワンカットシーンが話題になりました(厳密には1カットではないですが、1カットに見えるように編集されています)。

【衝撃】映画史上もっとも長い10分間ワンカットシーン by あんみつ エンターテイメント/動画 - ニコニコ動画

③手持ちカメラでの撮影

手にカメラを持って撮影することです。特殊な器具を使って、ショルダーと言われる肩に引っ掛ける方法やステディーカムを使った撮影も手持ち撮影の中に入ります。

これには様々な効果がありますが、「火花」の場合、手持ちカメラを使用することで、作品をドキュメンタリー調に見せることに成功しています。見ている人もその場にいるような感覚にさせる手持ち撮影の臨場感や不安感、ダイナミックさをだすことができるのです。

以前紹介した海外のショートフィルムではほぼ手持ちカメラで撮影し、臨場感をだしています。

creppy.hatenablog.com

 

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Netflixのクリエイティブ・フリーダムというポリシー

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 上記から分かるように、日本として「火花」はかなりチャレンジングなコンテンツだったのではないでしょうか。それが実現できたのは、Netflixには「クリエイティブ・フリーダム」というポリシーがあるからです。

Netflixはネット企業なので、テレビ番組のようにガチガチにルールが決まっておらず、クリエイターは比較的自由にコンテンツを制作することができます。

日本法人の副社長の大崎さんも以下のように語っています。

日本副社長の大崎氏は「クリエイティブ・フリーダム」という、Netflixにおけるコンテンツ製作のポリシーを強調した。

 「Netflixをプラットフォームに、世界中のコンテンツが日本に届けられるし、反対に日本のコンテンツが世界に発信されることも出てくる。作品の内容についてNetflixが細かく口出しすることはなく、クリエイターを信用して託す構えだ。シリーズもののドラマは話数であったり、1話あたりのタイトルの長さを決めるのもクリエイターの判断。今までより壮大なスケールの映画をつくることもできるようになる」という大崎氏。

 また、Netflixは全話完成してから配信するスタイルをとっているらしく、テレビ放送のように「打ち切り」が存在せず、テレビのようにスポンサーへ配慮する必要もない、まさに「クリエイティブ・フリーダム」が体現されたプラットフォームなのです。

 

まとめ

・オリジナルドラマ「花火」は映画的手法で作られた新しいドラマの形

・始めてNetflixが中心となって製作したコンテンツ

・そのため、映画的手法が取り入れられた自由度の高いコンテンツになっている

・作品の内容についてNetflixが細かく口出しすることはなく、スポンサーもいない、クリエイターにとって理想的な環境に「Netflix」がなりつつある

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