映画ビジネス研究所

映画についてビジネスの観点から考察するブログ

99%の制作会社はサービス力を磨け!

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はじめに

こんにちわ、胆石クラッシャー(@ev20405)です。

私は普段、ソシャゲ用イラスト制作を行うベンチャー企業でディレクターを務めております。いわゆる受託の制作会社です。

さて、制作会社はそれこそ大小星の数ほどありますが、最近どうやって他社と差別化するか?ということについて考えるようになりました。

自分で調べるうちに、世の中の99%の制作会社は差別化のためにサービス力を磨くべきだ!という結論に達しました。

今回は、なぜ99%の制作会社はサービス力を磨くべきなのか?ということについて書いていこうと思います。

 

企業の差別化の軸は大きく3つ

マーケティング入門書で人気が高い『白いネコはなにをくれた?』によると、企業の差別化には大きく以下の3つの軸があると言われています。

①手軽軸
②商品軸
③密着軸

それぞれ見ていこうと思います。

白いネコは何をくれた?

白いネコは何をくれた?

 

 

①手軽軸

早い、安い、簡単、手軽といったキーワードで差別化する戦略です。スピード・コスト重視であるとも言えます。ファーストフードで例えると、早い・安いをウリとしたマクドナルドや吉野家などが挙げられます。

 

②商品軸

商品やサービスの品質、技術の高さ・新しさで差別化する戦略です。クオリティ重視とも言えます。ファーストフードで例えると、高価格帯の独立系バーガーショップ等が挙げられます。

 

③密着軸

顧客のニーズに徹底的に応える戦略です。サービス力重視とも言えます。ファーストフードで例えると、ユーザーによって野菜の種類や量等をカスタマイズできるサブウェイ等が挙げられます。

 

通常はどこか1つの軸に絞って差別化します。ただ、軸を絞るといっても、他の軸で平均点を担保したうえでの話で、いくら安くてもマズイ店には行かないですよね?

また、手軽軸と商品軸を両立することは難しいですが、商品軸と密着軸は両立可能です。

 

99%の制作会社はサービス力で勝負するしかない

さて、上の3つの軸のどれを取るかという選択をする必要があるのですが、そもそも手軽軸(スピードとコスト)と商品軸(クオリティ)でトップを取るということは、容易ではありません。

マクドナルドは大企業の資本力スケールメリットによる高い生産性や経済効率があるからこそ、低価格戦略を取れるのです。

逆に、商品軸を極めようとすると、どうしてもリソースありきの話になってしまいます。良質な素材や高スキルなスタッフ等がいなければ難しく、それを追求できるだけの企業体力や資金、時間が必要になります。また、どの制作会社もクオリティには自信を持っているので、ある程度のレベルにいくと、大きな差をだすことが難しくなります。

また、手軽軸と商品軸は方向性の違いはあれども、ある程度画一的な評価軸になってしまいます(1番安い価格で制作してくれる会社は1社でしかない)。

 

一方で、密着軸=サービス力は、クライアントの数だけ答えがあります。そのため、他者と同じ土俵で戦う必要がなく、昔の牛丼の低価格戦略のように、競合他者との泥沼の戦いになりにくいです。

また、受託ビジネスはできるだけ安くクオリティの高いモノを作ることを求められますが、それ以上にクライアントのコミュニケーションコストを下げることが重要視されます。極端な話、丸投げでもいい感じにしてくれる制作会社ですね。

私自身外注さんにお願いすることが多いですが、値段とクオリティはもちろん注目しますが、いかにこちらの意図を汲み取ってくれるか、コミュニケーションコストを下げてくれるか、こちらの悩んでいる点をヒアリングして提案してくれるか、といったサービス力はそれ以上に重要視しています。

 

まとめ

制作会社がスピード・コストやクオリティで差別化するのは難しく、ほとんどの制作会社はサービス力で差別化していく必要があると考えています。こちらからどんどん提案できるようなアグレッシブでサービス力の高い制作会社を目指したいですね。

『白いネコは何をくれた?』の作者、佐藤義典さんの本は非常にマーケティングの勉強になるので、オススメです↓

白いネコは何をくれた?

白いネコは何をくれた?

 

 

図解 実戦マーケティング戦略

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ドリルを売るには穴を売れ

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『君の名は。』のプロデューサー川村元気氏が語る企画術

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はじめに

こんにちわ、胆石クラッシャー(@ev20405)です。

少し前に、『君の名は。』のプロデューサーである川村元気さんが登壇するイベントに参加しまして、そこで川村さんの企画に関するお話を聞くことができました。

今回はそのお話をベースに、ヒットメーカーである川村さん独自の企画術について書いていこうと思います。

 

そもそも川村元気さんって誰?

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簡潔に言うと、日本で一番有名な映画プロデューサーです。

大学卒業後、東宝に入社し、26歳で初めて映画『電車男』を企画・プロデュースし、37億円の興行収入を記録します。

その後、『デトロイト・メタル・シティ』『告白』『悪人』『モテキ』『君の名は。』『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』といったヒット作をプロデュースしつつ、小説や絵本、ミュージックビデオの監督、映画脚本執筆まで行う、あらゆる分野で活躍しているスーパークリエイターです。

ちなみに、川村さんの考え方については以下の本が参考になります↓ 

仕事。

仕事。

 
理系に学ぶ。

理系に学ぶ。

 
超企画会議

超企画会議

 

 では、そんな川村さんの企画術とは、一体どんなものなのでしょうか?

 

川村元気さん流企画術 〜面白さの発見、組み合わせの発明〜

企画とは

企画の仕事は料理に似ている川村元気氏は語ります。

良い素材(物語・テーマ)を適切な方法(監督、脚本、キャスト、演出)で調理し、盛りつける(広報、原作)。

まずクリエイターを見つけることから初め、それをどう組み合わせるかを考える。

 

映画企画の原則

①普遍性×時代性
:人間の感情に訴える物語×今である必然性

②発見×発明
:テーマや物語を発見し、映画的組み合わせを発明する

 上記を踏まえて、実際の作品ではどのように考えていったのでしょうか?

 

電車男』の場合

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電車男 スタンダード・エディション [DVD]

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古典的な物語×時代性のある原作

インターネットの物語を映画にするだけだとニッチになる。そこで、冴えない男が高嶺の華にアプローチという古典的な組み合わせと「ネットの人たちからのアドバイス」という現代的な要素を混ぜて、普遍性×時代性を構築した。

 

「東京の街をどう撮るか?」というテーマ×過去の名作

ヴィム・ヴェンダースの『東京画』やソフィア・コッポラの『ロスト・イン・トランスレーション』など、東京の街をうまいこと撮った映画が過去に数多くあったが秋葉原はまだ誰も撮ってなかった。そこで、秋葉原という街の芸術性を組み合わせられないか?と考えた。

電車男』の企画については、こちらの記事に詳細が書かれています。

www.cinra.net

例えば、僕が26歳のときにプロデュースした『電車男』の場合、最初にあったのは、「東京の街をどう撮るか?」というテーマだけだったんですよね。

―あ、そこから始まったんですね。

川村:はい。すると、ヴィム・ヴェンダースの『東京画』やソフィア・コッポラの『ロスト・イン・トランスレーション』など、東京の街をうまいこと撮った映画が、過去にいっぱいあるわけです。それらの映画は、どんなレンズや機材を使って撮ったのかというところまで調べて、ひと口に東京といっても、まだ誰も秋葉原をちゃんと映画として撮ってないことに気づきました。あの街はビジュアルが面白いから美術的にも使いたいし、そこに「2ちゃんねる」という空間が混ざってくるとさらに新しいなと。

―そういう発想の流れだったのですね。

川村:あと僕は、ビリー・ワイルダーの映画『アパートの鍵貸します』や『お熱いのがお好き』、チャップリンの『街の灯』みたいに、ダメな男が高嶺の花に向けて頑張る話が好きなんですよね。だから、そういうロマンティックコメディーの古典に、「ネットの人たちからのアドバイス」という現代的な要素を混ぜて、舞台は秋葉原。そういう三点倒立で、映画の企画ができないかな? というところから考えていきました。

 

君の名は。』の場合

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君の名は。』には3つの発明がある。

新海誠監督にメジャー長編をやらせるという発明

アニメ業界ではすでに有名だった新海誠監督だが、これまでは短編かつマニアックな作品が多く、誰も監督にメジャー長編を撮らせようとしていなかった。そこで、『君の名は。』ではメジャー映画のストーリーと物語性、スタッフィングに挑戦した。

 

②新旧混在のスタッフ・キャスト

新旧混在のスタッフとキャストで安定感と新鮮さを担保した。

1つ目は、『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』で作画監督を務めた元ジブリ安藤雅司(2017年時点での歴代邦画興行収入ランキング上位4作品のうち3作品の作画監督を担当しているレジェンド)と、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』や『心が叫びたがっているんだ』のキャラデザを務めた田中将賀との組み合わせ。

2つ目は、『千と千尋の神隠し 』『ハウルの動く城 』で声優を務めたベテラン神木隆之介氏と、オーディションを勝ち抜いた新星・上白石萌音との組み合わせ。

 

③RADWINPS×映画音楽

ロックバンドの才能を映画音楽に取り込んだ。ロックバンドに映画音楽をお願いするのは危険だと言われていたが、Youtube世代に刺さると考えて依頼し、複数曲を入れたことでミュージカルのような仕上がりになった。

 

最後に

いずれも結果論で後付けでしかない。つくるという行為は強烈な自己肯定だから、徹底的に疑って昇華させていくことが重要。

 

質疑応答

・どうやってターゲット決めているか?

自分が観たいもの、欲しいものを考え抜くだけ。お金払って映画を観るし、本屋で本も買う。そうすると、「あーこういう映画あればいいのに」「こういう本あればいいのに」と思ったときに、じゃあこういうのがあればヒットするのでは?と思うことが出来る。そうして裏付けしていく。自分が感じるなら、他にも求めている人がいるのでは。近いところを掘っていくほうが深くなる。

 

・どのようにアイディアの種を見つけているのか?

みんなが感じてるけど、まだ言葉になってないことを拾うことを意識してる。「なんでこうなってるんだろう」と感じたものを疑っていく。「実は私もそう思ってた!」を見つけることがヒットだと思っている。その種は、違和感ボックスみたいな感じでストックしている。

この内容については、以下の記事に詳しく書かれています。

diamond.jp

世の中では「A」といわれていることが、本当にそうなのかと仮説を立て、これを綿密に調べる。そこで実は「B」でしたと分かれば、それを物語化して提案するのです。それに対して読者が潜在的に抱いていた感情が反応すれば、新しいエンターテインメント、面白い物語が生まれると思っています。

 世間では「夫婦は結婚したら、愛が情に変わって家族になる」と当たり前に言うが、本当にそれでいいと皆が思っているのだろうか。恋愛感情というものが自分の周りから失われていることにも皆、うすうす気付いているのに、それを見て見ぬふりをしていないのかと。

 こうした、人々の集合的無意識に問いを投げかけて、「それは僕も気になっていた」とか「私もずっと引っ掛かっていた」と、読者が次々と言いだすことになれば、それがヒットするということなのかなと思います。

diamond.jp

「男の色が青、女の色がピンク」というルールを知らなかった。でも、これは誰が決めたのか。なぜ、そういうルールになっているのかと幼心に思いました。これが、「違和感ボックス」に入った一つ目の出来事だったかもしれません。

 

まとめ

名著『アイデアのつくり方』で、作者であるヤング氏は「アイデアは既存の要素の新しい組み合わせである」と語っています。

アイデアのつくり方

アイデアのつくり方

 

 今回の川村さんのお話も、根幹は要素同士の組み合わせにあると感じました。

川村さんは、素材(物語・テーマ)を嗅ぎとる圧倒的な嗅覚と適切な方法(監督、脚本、キャスト、演出)を見つける知識・センスを持ち、かつ独自の組み合わせを見出せる人なのでしょう。

面白い作品を作るためには、過去の名作をたくさん見ろ!とよく言われますが、その理由は適切な方法を見つけるための引き出しを増やすべき、という意味な気がしました。

 

川村さんの他の著作はこちら↓

四月になれば彼女は

四月になれば彼女は

 
億男

億男

 
世界から猫が消えたなら (小学館文庫)

世界から猫が消えたなら (小学館文庫)

 
ムーム (MOEのえほん)

ムーム (MOEのえほん)

 

 アクション映画とコンテンツビジネスについて呟くよ!

 

集英社は公式ネタバレサイトを運営したら儲かるんじゃない?

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はじめに

こんにちわ、胆石クラッシャー(@ev20405)です。

先日、人気漫画「ワンピース」の最新作の内容を発売前にインターネット上のいわゆる「ネタバレサイト」で公開したとして、犯行グループが逮捕されました。

www.huffingtonpost.jp

注目すべき点は、その広告収入です。

県警は、堀田井容疑者らが14年9月以降少なくとも約3億500万円、上原容疑者らは12年5月以降約7400万円の広告収入を得ていたとみている。

 かなり金額に開きがありますが、14年9月以降で約3億500万円とすると、月850万円程度でしょうか。毎月PS4が200台買えるレベルのようです。

このニュースを見て、これだけ広告収入が発生するってことは、それだけアクセスがあるってことなので、同じようなことを集英社が公式でやれば儲かるんじゃね?と思ったので、少し考察してみようと思います。

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『HiGH&LOW THE MOVIE』と『RE:BORN』を観て日本発アクション映画の未来を考えた話

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はじめに

こんにちわ、胆石クラッシャー(@ev20405)です。

私は年100本以上アクション映画を観るほどアクション映画が大好きです。アクションはどうしても海外映画の方がクオリティが高いことが多いので、観るのは海外作品が多いです。

しかし、最近日本のアクション映画を2本観て、その日本映画離れしたアクションに衝撃を受けました。その作品は『HiGH&LOW THE MOVIE』『RE:BORN』です。

この2本は、海外に比べて資金や環境で劣る日本のアクション映画が、今後どういう方向で進んでいくべきかという問いに対して、1つの答えを提示してくれました。

今回は日本発アクション映画の未来について、書いていきます。

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映画館の空席率を調査したら約85%だった件

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はじめに

こんにちわ、胆石クラッシャー(@ev20405)です。

劇場鑑賞が定額見放題のサービスMoviePassが月額30ドルの料金を、通常の入場料並みの9.95ドルに引き下げることを発表しました。

このニュースで先週アメリカ映画業界に激震が走りました。新たな料金プランでは、

月9.95ドルで毎日1本映画を観ることが可能になります。安い!

animationbusiness.info

3D映画、IMAXは含まれず2Dのみですが、鑑賞する時間、作品や劇場に制限ありません。MoviePassの契約する劇場は米国の映画館の91%をカバーしています。つまり、一般的な映画館のほとんどで、1日1本映画を月10ドル以下で楽しめることになります。

これは衝撃的なニュースですね。月2本映画を観ればほとんど元が取れるわけですから、映画ファンは利用しない手はありません。

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【感想】『東京ヴァンパイアホテル』レビューと考察。この作品はNetflixで配信するべきだと感じた

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はじめに

こんにちわ、胆石クラッシャー(@ev20405)です。

みなさん『東京ヴァンパイアホテル』という作品をご存知でしょうか?

自殺サークル』(2002)、『愛のむきだし』(2009)、『冷たい熱帯魚』(2011)など日本の映画ファンだけでなく海外からも常に注目されてきた園子温が総監督を務める作品で、Amazonプライム・ビデオで独占配信中の連続ドラマです。

どうやらあまり評価は高くないようですが、これはAmazonプライムビデオで配信したことに起因しているのではないかと考えています。

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【感想】『ジョン・ウィック:チャプター2』レビュー。細かい設定にもこだわった正統派続編の傑作!

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※安定のCARシステムを披露してくれるキアヌ

はじめに

こんにちは、胆石クラッシャー(@ev20405)です。

柔術をベースにした近接格闘術とガンアクションを組み合わせた「ガン・フー」がアクションファンを驚かせた傑作『ジョン・ウィック』。その続編『ジョン・ウィック:チャプター2』が公開中です。

今回はそのジョン・ウィック:チャプター2』の感想を書いていこうと思います。

 

作品概要

あらすじ

前作でニューヨークを舞台にロシアン・マフィアを相手に繰り広げた壮絶な復讐劇から5日後。平穏な生活を送りたいジョンは、イタリアン・マフィアのサンティーノからの殺しの依頼を断るが、それにより自宅を爆破されてしまう。ジョンはサンティーノへの復讐を開始するが、命の危険を感じたサンティーノに7億円もの懸賞金をかけられ、世界中の殺し屋から命を狙われる事態に巻き込まれてしまう。

予告編

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